『人道的介入』再読

ウクライナ戦争に関連してコソボ紛争が各方面で取り上げられていたのを機に、2001年発行の最上敏樹著『人道的介入』を再読すると、コソボ紛争は止むを得ない人道的介入だったと内容を誤解して記憶していたのに気がついた。なぜそうなったのか。個別的な例と…

時代に逆行する大阪都構想

1 基礎自治権の放棄 特別区は市と違い、不完全な基礎自治体であるといえる(地方自治法上の特別地方公共団体)。 特別区になれば、市に二度と戻れず(東京市は昭和18年に廃止されてから75年以上たってもいまだに復活していない)、東京特別区(東京23区)…

戦時体制としての東京都制定=東京市廃止

第81帝国議会 《昭和18年1月29日衆議院本会議内相説明》 『東京都制制定ノ趣旨ト致シマス所ハ、之ヲ要約致シマスルト凡ソ次ノ三点ニ帰着スルト思ヒマス、其ノ一ハ帝都タル東京ニ真ニ其ノ国家的性格ニ適応致シマシタ確固タル体制ヲ確立スルコトデアリマス、其…

危機の時代が始まった

太平洋戦争後、日本国憲法下で平和主義を国是としていた日本が、7月10日の参議院選挙で改憲勢力が3分の2を突破し、憲法改正国民投票が行われることが必至の情勢となった。公明党、大阪維新の党は、最初のうち抵抗しても、自民党が圧倒的な力を持ってい…

原発は安全ですなんて、さっぱりわかんねえ

寒い冬がそこまで来てる あんたもこのごろ抜け毛が多い それでもTVは言っている 「日本の原発は安全です」 さっぱりわかんねえ 根拠がねえ これが最後のサマータイム・ブルース 「サマータイム・ブルース」RCサクセション(アルバム「Covers」より) 菅首相…

静岡茶を飲みてえ

放射能はいらねえ 牛乳を飲みてえ 何やってんだー税金かえせ 目を覚ましな 巧みな言葉で一般庶民を だまそうとしても ほんの少しバレてるその黒い腹 「ラヴ・ミー・テンダー 」RCサクセション(アルバム「Covers」より) チェルノブイリ原発事故を受けて、忌…

人災を止めろ

4月29日、内閣官房参与に任命された、原子力の専門家で東京大学大学院教授の小佐古敏荘氏が内閣官房参与を辞任するために記者会見を開いた。 小佐古氏は以下の2点に対して抗議した。 1 福島県の小学校等の校庭利用の放射線量基準が、1ミリシーベルトから20ミ…

憲政を破壊した麻生首相

7月12日の都議選を控え、自民党内は混乱状態になっているようだが、7月5日の静岡県知事選で民主党が分裂選挙だったにもかかわらず、民主党候補が当選していることから、都議選の結果及びその後の国政の政局については、政治に関心がある人ならある程度予想が…

日勤教育の責任者こそ起訴せよ

2009年7月8日、JR西日本の社長(現場が急カーブに付け替えられた1996年当時の常務取締役鉄道本部長)が業務上過失致死傷罪で在宅起訴された。起訴された理由は、2005年4月25日の福知山線脱線事故(乗客106人死亡、562人重軽傷)当時、カーブの危険性を認識で…

KY−筑紫哲也氏の手紙

空気を読め、さもないとお前は時代遅れだぞ、仲間外れだぞ、とおどしている。そうでなくとも「命令型」でよかった日本語を「懇願型」の婉曲話法に変えていくほど心優しい若者たちが、この同調努力にどう耐えられるのだろうか—と私はまたお節介な心配をしてい…

必要なのはテロ特措法ではなく労働環境特措法

安倍首相が臨時国会が始まったばかりの時点で退陣してしまった。このことについては、ただ呆然としてしまったというしかないが、いくつか感想があるので記しておくことにする。 1 安倍首相は自分の思いどおりに美しい国づくりができなくなったこと 内閣改造…

「シッコ」−民営化信仰に対する警告

マイケル・ムーア監督の「シッコ」をみて、日本に公的な健康保険があって本当に良かったと思った。小泉元首相が郵政民営化ではなく、健康保険民営化をしていたら、日本人もこの映画のように過酷な状況に陥っていただろう。テレビで外資系保険会社が大量にCM…

憲法9条を救った年金問題

7月29日に行われた参院選は自民党が37議席で、与党が過半数割れという結果になった。過去最低だった1989年の36議席を1議席上回ったからというわけでもないようだが、安倍首相は続投を宣言し、これに対して世論の賛否はほぼ半数に割れている状況である。 今回…

安倍政権は国民を機械扱いするのか

ホワイトカラー・エグゼンプションは、マスコミから残業代ゼロ法案という的確な名称をつけられたこともあって、通常国会への提出は見送られた。しかし、政府・与党は参院選後に改めて国会に提出することを考えているといわれる。それならば、参院選で導入の…

「I'M WITH STUPID」−政治家の嘘を許さないイギリス国民

あぁ、僕は賛成だよ あぁ、僕は(“愚か者”と)同じ意見だよ 「I'M WITH STUPID」PET SHOP BOYS 「このシングルは、どうしてその相手と付き合っているのか、自分以外、世界中の誰も理解することができないっていう状況について歌っているラヴ・ソングなんだ。…

日本人の戦争体験と奴隷根性−『民主と愛国』

小熊英二著『<民主>と<愛国>−戦後日本のナショナリズムと公共性』は、分厚い本だったが、意外と読みやすい本だった。 本の内容は一言ではとても言い表せないのだが、ポイントとしては次の二点ではないかと思った。戦前、戦中、戦後と日本人の奴隷根性は…

トクヴィルを手がかりに民主主義を考える(3)

前回に続いて、『アメリカのデモクラシー』第1巻から、民主主義に関して、私なりに抜粋したものを紹介したい。 引用した部分は、大衆政治の欠点、自由と専政、地方自治、多数の専政等について。 チャーチルが「民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。…

トクヴィルを手がかりに民主主義を考える(2)

前回に続いて、トクヴィルを手がかりに民主主義を考えてみたい。 今回は、『アメリカのデモクラシー』第1巻から、民主主義に関して、私なりに抜粋したものを紹介したい。 1835年に書かれたものであるが、現代に通用する部分が多く、驚かされると同時に、興味…

トクヴィルを手がかりに民主主義を考える

前回の記事「安倍政権の徴農政策−自由民主主義から極右全体主義へ」は、題名がセンセーショナル過ぎたかもしれないが、記事の内容は冷静に書いたつもりである。もし、安倍政権が稲田議員の徴農政策を実行した場合、国民は支持しないだろうが、衆院の多数にま…

安倍政権の徴農政策−自由民主主義から極右全体主義へ

以下の産経新聞の記事は、いろいろなブログで話題になっているので、当ブログで今さら取り上げるまでもないと思ったのだが、マスコミではきれいごとばかりで、この記事のような安倍氏の本質をほとんど話題にしていないことが気がかりに思えたので、今回取り…

「ランド・オブ・プレンティ」−滑稽なまでに哀れなアメリカ

ドイツ人の映画監督であるヴィム・ヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」を見た。本作もヴェンダースが得意とするロードムービーだが、非常に政治的な映画だったので、興味深かった。 9・11以後、アメリカ批判の映画としては、マイケル・ムーアの「…

『明治デモクラシー』−民主主義こそ日本の伝統

GHQによる押しつけ憲法や押しつけ教育はやめて、憲法と教育基本法を改正して、日本の伝統にかえれと自民党はいう。自民党がいう日本の伝統とは愛国心や家族主義のことであろうが、民主主義はその中にないらしい。(もしあれば、共謀罪法案など決して国会に提…

イタリアの政権交代

4月9日と10日、イタリアで行われた上下両院選挙で、プローディ元首相率いる中道左派連合「連合」が、ベルルスコーニ首相の中道右派連合「自由の家」を小差で破った。 野党陣営の勝利確定=最高裁、最終集計結果を発表−イタリア(ヤフー・時事通信) (1)ベ…

フランスのCPEと日本の解雇ルール

フランスで、26歳未満の若者を2年間の試用期間中は自由に解雇できるとしたCPE(初期雇用契約)が学生等のデモで廃案になった。デモには100万人以上が参加したということで、フランス国民の政治意識の高さを見せつけられた思いがしたが、東京新聞で学習…

靖国問題と憲法9条

前回の記事「『ブレア時代のイギリス』−イギリスの労働党と日本の民主党」は、最後の方で靖国問題に少しふれることになった。私は靖国問題については詳しくないので、あまりふれたくなかったのだが、大阪高裁で違憲判決が出ているとおり、私は首相の靖国参拝…

『ブレア時代のイギリス』−イギリスの労働党と日本の民主党

山口二郎著『ブレア時代のイギリス』(岩波新書)は、日本の民主党を考える際に参考になるイギリス労働党について書かれた本であるので、民主党を考える際にはぜひ読んでおきたい本といえる。 ブレアは「大統領型首相」、「選ばれた独裁者(elected dictator…

『昭和史の決定的瞬間』−社会大衆党と民主党

坂野潤治著『昭和史の決定的瞬間』(ちくま新書)は、今までの常識を覆して、日中戦争直前まで民主化が進展していたことを明らかにしている。先日、NHKで戦前のカラー映像の番組を見ていたら、現在の映像を見ているような不思議な気分にとらわれた。戦争前に…

ハンナ・アーレントによる労働観の再考(2)

「ハンナ・アーレントによる労働観の再考(1)」の続きです。 前回はマルクスの労働観までをみてきましたが、今回は本題の、アーレントの労働観が登場します。アーレントは、「労働」「仕事」「活動」の3つの活動力を独自に概念化します。 以下、『ハンナ・…

ハンナ・アーレントによる労働観の再考(1)

日本人の勤勉さが、日本を世界第二位の経済大国にさせたともいわれる。しかし、その実態は、過労死する人が後を絶たず、不景気になってからもそれは変わらない。 労働至上主義は、科学的社会主義を生み出したカール・マルクスなどに源流を求めることができる…

『拒否できない日本』−アメリカ合衆国のための日本政府

マンションの耐震強度偽装事件で、その物件の多くの建築確認を民間のイーホームズが行っていたことで、建築確認の検査機関を民間に開放した規制緩和に対して、マスコミ等で様々な意見が出た。しかし、それは一連の規制緩和の一部でしかなく、1998年に建築基…