時代に逆行する大阪都構想
1 基礎自治権の放棄
特別区は市と違い、不完全な基礎自治体であるといえる(地方自治法上の特別地方公共団体)。
特別区になれば、市に二度と戻れず(東京市は昭和18年に廃止されてから75年以上たってもいまだに復活していない)、東京特別区(東京23区)で行われているような自治権拡充運動が永久に続くことになる。
東京でも区は都会的で格好良く、市よりも格上と勘違いしている人がいるが、東京特別区は都の内部団体だった歴史があり、不完全で常に不安定な状態を強いられていた。
現在の東京特別区が市とほぼ同等であるため、特別区理想論=大阪都構想が出てきたのかもしれないが、元々、現在の特別区が市並みになったのは東京特別区による自治権拡充運動の成果である。区長を選挙で選ぶことさえできなかったことなど、東京特別区には多くの苦難の歴史があった。大阪都にするということは大阪市民が自治権拡充運動という苦難の歴史に自ら飛び込むことを意味する。
2 二重行政解消のために市を廃止したのは戦争中の東京のみ
先進国で市を州から独立させている都市はある(アメリカのワシントンなど)が、市を廃止したのは戦争中の東京のみ。
基礎自治体を廃止するのは戦時下の中央集権国家のやることで、実際、東京の歴史が証明している。
デメリットがあるので賛成しないが、どうしてもどちらかの自治体を廃止したいのなら、ワシントンのように市が府から独立すべきだろう。
3 市を廃止して喜ぶ市民?
特別区の数少ないメリットとして、市よりも住民との距離が近くなることがあるが、これは市を廃止してしまうのではなく、地方自治法上の総合区制度を利用するなど、現在の行政区の権限を拡充して対応すべきだ。
横浜市を廃止して神奈川都にすべきと主張したらほとんどの横浜市民から怒られそうだが、同じことを大阪市民の約半数が賛成しているのが不思議でならない。
府の名前がたまたま大阪だから賛成しているだけではないだろうか?