必要なのはテロ特措法ではなく労働環境特措法

 安倍首相が臨時国会が始まったばかりの時点で退陣してしまった。このことについては、ただ呆然としてしまったというしかないが、いくつか感想があるので記しておくことにする。 1 安倍首相は自分の思いどおりに美しい国づくりができなくなったこと  内閣改造で安倍首相は自分の思いどおりの政策が打ち出せなくなってしまったのではないか。実力者が内閣に入ったことに加えて、官房長官に与謝野氏が就いたことで、タカ派的な政策を進めることが難しくなったのかもしれない。 2 日本政府にとってアメリカ合衆国に従うことが至上命令であること  安倍首相は参院選惨敗を気にしない見事な鈍感力をみせたが、テロ特措法のためには政治生命を賭け、首相退陣するというとても敏感なところをみせた。これは、民意は気にしないが、アメリカの意向は気になって仕方ないということで、いかに安倍首相がアメリカに従属していたかを示している。安倍首相はタカ派ではあるが、ナショナリストではなかったのかもしれない。 3 日本は総理大臣まで心を病むような国であること  日本は格差社会が進み、過労死する人がいる一方で、失業している人や働いても生活していけないほどの給料しかもらえないワーキングプアの人がいる。労働環境の劣悪化や、失業に苦しむ人などで、自殺者は先進国最大の3万人超となっている。このストレスに満ちた国のなかで、格差拡大に貢献していた首相も例外でなく、心を病んでしまったというのはブラックジョークを通り越して、なんだかもの悲しい。  首相は一般のサラリーマンとは違うとはいえ、日本的労働環境から逃れることはできなかったということだと思う。小泉元首相のように時々好きなオペラを見に行くなど、うまく息抜きをすることができなかったところに、自分の内閣で実力者に取り囲まれ、アメリカからプレッシャーをかけられ、窒息状態になってしまったのだろう。安倍首相の自己責任といえばそれまでだが、周囲の人もメンタルヘルスの認識に甘さがあったのではないか。  今、日本に必要なのは、アメリカのブッシュ大統領に忠誠を誓うためのテロ特措法ではなく、安倍首相も含めた日本人のための労働環境特措法ではないか。自殺者3万人超という現状を考えれば、労働環境とメンタルヘルスについて、緊急に特別措置しなければならないだろう。  なお、週刊現代による安倍首相の脱税疑惑が、首相退陣の理由の一つであったことも事実だろう。しかし、私は上に書いたようなことから、脱税疑惑がなくても安倍首相は政権を投げ出していたように思えてならない。 参考ブログ 病む社会を感じる(GK68's Redpepper) 安倍総理、辞任表明(霞が関官僚日記) 安倍スキャンダルは本物−−自民党崩壊の地響き(ブログ時評)