2005-01-01から1年間の記事一覧

ハンナ・アーレントによる労働観の再考(2)

「ハンナ・アーレントによる労働観の再考(1)」の続きです。 前回はマルクスの労働観までをみてきましたが、今回は本題の、アーレントの労働観が登場します。アーレントは、「労働」「仕事」「活動」の3つの活動力を独自に概念化します。 以下、『ハンナ・…

ハンナ・アーレントによる労働観の再考(1)

日本人の勤勉さが、日本を世界第二位の経済大国にさせたともいわれる。しかし、その実態は、過労死する人が後を絶たず、不景気になってからもそれは変わらない。 労働至上主義は、科学的社会主義を生み出したカール・マルクスなどに源流を求めることができる…

『拒否できない日本』−アメリカ合衆国のための日本政府

マンションの耐震強度偽装事件で、その物件の多くの建築確認を民間のイーホームズが行っていたことで、建築確認の検査機関を民間に開放した規制緩和に対して、マスコミ等で様々な意見が出た。しかし、それは一連の規制緩和の一部でしかなく、1998年に建築基…

今後の民主党のあり方について

9月11日に行われた総選挙で民主党が大敗した。小選挙区制のマジックがあったとはいえ、小泉自民党に風が吹いたことは確かである。いろいろなところで民主党敗北の分析がされているが、いつものことながら山口教授の分析がとても鮮やかだったので、ここで紹介…

よみがえる治安維持法—共謀罪法案

今国会では、日本のファッショ化を象徴する3つの法案が審議されている。憲法改正時の反対運動を規制する国民投票法案、実質的に障害者切り捨て法案といわれている障害者自立支援法案、そして、戦前の治安維持法によく似ている共謀罪法案である。通常であれ…

「Around the Sun」

「この曲が戦争について僕らが言及する唯一のものだと思ったら大間違いだ。最近僕らの音楽にはたくさんの異議申し立てが織り込まれている。中にはブッシュ政権に対して直接、もしくは間接的に抗議したものもある。声を挙げないでいられるわけがない。」 (R.…

シュンペーターとサッチャリズム

前回、「カルト宗教のような新自由主義」で反ケインズ経済学を取り上げたが、その補足として、今回、森嶋通夫著『思想としての近代経済学』(岩波新書1994年)から、シュンペーターとサッチャリズムの関係について取り上げたい。 シュンペーターはオーストリ…

カルト宗教のような新自由主義

1929年、資本主義社会を襲った世界恐慌は、それまで経済学で支配的だった新古典派経済理論の信頼性を失わせ、経済学は危機を迎えた。この経済学の危機を解決したのが、ケインズの『一般理論』だった。 しかし、戦後になってから、ケインズ以前の新古典派…

民意を歪めてまで安定政権をつくるのか

9月18日、ドイツで行われた総選挙は、第1党と第2党が3議席差になる大接戦となった。ドイツの選挙制度は小選挙区比例代表併用制で、日本の小選挙区比例代表並立制と名前が似ているが、全く違う制度である。ドイツの併用制は比例代表の得票率でまず各党…

改憲への大きな一歩―2005年総選挙を振り返る

1 投票率上昇分が自民党に流れた? 9月11日に行われた総選挙の投票率は67.51%(小選挙区)と、前回の59.86%より大幅に上昇し、1994年総選挙の水準まで回復した。 無党派層は小選挙区でどこに投票したか(出口調査)(読売新聞9月12日…

自公で3分の2の議席確保ー平和国家の放棄へ

前の記事(「小泉構造改革=新自由主義とは何か」)は選挙終了後にアップしたものだが、書いたのはまだ結果が出ていない選挙中だったので、選挙結果を予想して書いたため、結果とズレがあった。「小泉自民党の圧勝」というのは自公で3分の2を取ることでは…

小泉構造改革=新自由主義とは何か

総選挙は小泉自民党の圧勝で終わり、郵政民営化をはじめとする小泉構造改革がこれからさらに加速しそうだ。小泉構造改革は言うまでもなく新自由主義の一種であり、徹底した民営化は小さな政府となるが、小さな政府とは国が福祉から手を引くことを意味してい…

争点誘導の総選挙

(1)郵政民営化反対論について 自民党の郵政民営化反対派は小泉首相から抵抗勢力や守旧派と言われ、郵政法案に反対した民主党も同じ抵抗勢力だと言われている。さらに、反対派議員の選挙区に「刺客」を送り込んでいる。 マスコミも、首相のレッテル貼りを…

つくる会教科書を杉並区民は支持するのか

つくる会の教科書は既にいくつかの自治体で採択されていたが、杉並区という東京のリベラルな地域で採択されたことに驚かされた。石原知事の東京都(都立の中高一貫校等)や、保守的な地方で採択されるのは、予想されたことであったし、採択した自治体数もわ…

JR西日本の脱線事故はこのまま風化してしまうのか

JR西日本の脱線事故については、運転士の死亡等で当初原因究明が難航したため、当ブログで取り上げるのを避けてきたが、三ヶ月以上たっても刑事捜査が進展していないようなので、今回取り上げることにした。捜査当局がこのまま幕引きを狙っているとしたら、…

争点隠しの都議選

1 都議選投票率43.99% 7月3日、東京都議会議員選挙(定数127)が行われたが、過去2番目の低投票率だった。低投票率の原因として、特に争点がなかったことが挙げられる。しかし、正確にいえば争点はあったが、それがわかりにくくぼかされていたといえ…

Live 8 インターネット中継をみて

Live 8は日本の幕張を含めて10都市で開催されたが、AOLのサイトでロンドンなどいくつかの都市のライブ中継をすることを知り、ロンドンの開催時間に合わせてAOLのサイトにつなげてみると、ADSLで簡単につながった。小さな画面に写るのは、まだ昼間のロンド…

「Don't Believe The Truth」

「この3年間のうち、1年半はニュースを観ていたような気がする。今の時代、情報があまりにも多すぎる。戦争を始めるとき、ブッシュもパウエルもブレアも結局みんな嘘をついていた。世界で最も権力のある人たちを信用できないんなら、一体誰を信用すればい…

フランスのEU憲法否決(2)恐怖の政治

フランスのEU憲法反対派は、EU憲法の新自由主義的な面に反対していたといわれるが、実際にはEU憲法自体に反対していたというよりも、EU憲法を国民投票で否決することが目的であって、そのために工場移転や移民などによる失業といった有権者の恐怖感に訴えか…

自殺大国の旧ソ連と日本

大阪過労死問題連絡会 最新情報(2004年9月) 2004/9/9 日本が先進国でトップに WHO調査 【ジュネーブ大木俊治】日本の自殺者数が人口10万人あたりの比率に換算すると世界第10位で、旧ソ連・東欧圏を除く主要先進国の中では最も多いことが8日、世界…

フランスのEU憲法否決(1)サルコジ人気の不思議

フランスでEU憲法が否決され、マスコミやブログでその意味や影響についていろいろ語られている。EU憲法についてもいろいろ紹介されているが、調べれば調べるほど、私にはEU憲法というものが良いものだか悪いものだかわからなくなってきた。もし、私に国民投…

『働くということ』(2)

最終章でロナルド・ドーアは、ILOの用語でいう「中核的労働基準」の問題と、グローバル経済化の中でさまざまな社会は異なった価値体系を維持できるかについて取り上げている。ここでは、後者について、4つに分類して紹介する。 1 同質的な市場個人主義的な…

『働くということ』(1)

ロナルド・ドーア『働くということ-グローバル化と労働の新しい意味』(中公新書)(リンク先は読売新聞の書評)は、経済だけでなく、日本社会全体の現状をとても鮮やかに分析していて、目から鱗が落ちる思いがした。ただ、あまりに鮮やかに一刀両断してい…

リップマンの『世論』(2)

第一次世界大戦中の1917年11月、ロシア革命で成立したボルシェヴィキ政権は「平和に関する布告」で帝政ロシアの秘密外交文書を公表した。ボルシェヴィキ政権は、連合国に無併合・無賠償・民族自決の諸原則にもとづく講和を呼びかけたが拒否されたため、1918…

リップマンの『世論』(1)

リップマンの『世論』は「ステレオタイプ」という言葉で有名な政治学の古典だが、私は以前から知っていたものの、読もうとは思わなかった。先日、『世論』ぐらいは読んでおきたいと思うことがあり、それを機会に、読んでみることにした。 岩波文庫で上下2冊…

NHKと政治の問題

NHK介入問題については、告発したNHKチーフプロデューサーと、それを報道した朝日新聞側に当初から厳しい状況になっていたため、この問題を取り上げるのは見合わせていた。告発から2週間がたち、NHKと朝日新聞の対決という形になったが、NHKチーフプロデ…