つくる会教科書を杉並区民は支持するのか

 つくる会の教科書は既にいくつかの自治体で採択されていたが、杉並区という東京のリベラルな地域で採択されたことに驚かされた。石原知事の東京都(都立の中高一貫校等)や、保守的な地方で採択されるのは、予想されたことであったし、採択した自治体数もわずかであったので、このまま下火になるのではないかと思っていたのである。

『つくる会』教科書攻防(東京新聞8月6日)

■「杉並区民は無関心過ぎる」

 別の区民は「杉並区は住民運動が根付いた先進地域のイメージがあるが、実は区民は無関心過ぎる。『リベラルでやり手』の印象を与える区長の下で、つくる会の教科書を支持しなかった区教育長が辞めていても、その事実に関心を持たない」と指摘した。

【関連】 現場の意向尊重を 政治的中立損なう恐れ(東京新聞8月12日)

<解説>

 「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する扶桑社版の歴史教科書は、太平洋戦争を当時の日本側の公称である「大東亜戦争」と表記し、神話を多く取り上げるなど、特定の歴史観が反映されている。このため、中国や韓国が採択に強く抗議しているほか、国内でも、支持派と反対派が激しく対立し、四年前の一斉採択では市区町村で全く採択されなかった。

 今回「つくる会」主導の教科書を採択した杉並区教委や東京都教委の場合、同会の思想に共感する区長や知事の政治姿勢が影響した可能性が強い。教科書の採択権限は教育委員会にあるが、委員は区長や知事が議会の同意を得て任命するからだ。

 杉並区では前回、同教科書への評価が委員の間で分かれ、その後、山田宏区長の側近だった元区職員が委員に就任。この委員は当初は三種類の教科書を支持したが、最終的に「つくる会」主導の教科書を推した。

 まさかとは思ったが、やはり元民主党区長の意向のようだ。民主党を支持すると、つくる会教科書を支持したことになると思った有権者はほとんどいなかったのではないか。小沢自由党から社会党までの議員が一緒になった党では、歴史認識や安保・外交問題で一致する方が不思議な話なので、ばらばらと言われても仕方が無い。政権交代達成後は暫定政権にして、できるだけ速やかに保守派とリベラル派に分裂して、自民党を含めた形で政界再編すべきだろう。そうしないと、有権者はどの党に投票すればよいのかわからない。

 13日、グラビアアイドルのインリンさんがブログで次のように主張した。

S cawaii(インリン・オブ・ジョイトイの日記)

ちなみに今日は、平和を愛する私としてはマジ許せない事が東京で起きました。

日本の侵略戦争を否定して美化してる人達が作った歴史教科書を杉並区が採用したんです(>_<)

日本人は過去の過ちを認めて反省して教えて、そしてアジアの国と平和な未来を築くべきだと思います。

今の若者に過去の責任はないけれど、過去の過ちを正しく知る権利と義務があると思います。

恐ろしい事に巻き込まれない為には、

何が恐ろしいか知っていなければ反対出来ません。

残念ながら、日本が侵略戦争を行ったのは事実です。

嘘で事実をごまかすのでは、日本人も含めた戦争犠牲者がかわいそう!

嘘の教育をしたら、また、未来の戦争犠牲者と加害者を作るだけです!

 私は知らなかったのだが、インリンさんはセクシーなグラビアアイドルで、以前から政治的な発言をしているようだ。台湾生まれだが、台北政府よりも北京政府に好意的なようだ。

 インリンさんの上の主張に私は同意するが、中国人からこう言われたら反発する日本人は多いだろうと思う。しかし、台湾人からこう言われたらどうだろうか。台湾人といえば親日的な人が多いことで知られるし、中国嫌いの石原知事も李前総統と交流があるなど、反中派で台湾に好意的な人は多い。

 インリンさんは台湾人である。これだけであれば、日本人には耳が痛い。しかし、北京政府に好意的であれば、本当は中国人なのではないか、そうであればけしからんという訳のわからない反中派からの批判が出てくるだろう。

 さて、今回この記事を書くにあたって、つくる会教科書(中学の歴史)を読んでみることにした。まだ全部読んだわけではないが、感想としては以下のとおり。

1 中学生の内容としては難しい。

2 神話が多く紹介されていて、史実と神話が混同されかねない。

3 保守派の歴史観が紹介されている。そのこと自体は問題ない。問題なのは、保守派の歴史観がほとんど一方的に紹介されていること。

 初めて歴史を学ぶ中学生の段階で、保守派の歴史観を客観的に読むのは至難の業だろう。例えば一例を挙げると、共産主義全体主義の一種として紹介されている。スターリニズム全体主義の一種といわれることはあっても、共産主義すべてを全体主義とするのは私は今まで聞いたことがないし(ハンナ・アレントスターリニズムについていっている)、そのような説があるとしても、中学校の歴史教科書で断定的に紹介するのはあまりにも学問的に乱暴ではないだろうか。(荒らしが来そうなのであらかじめ言っておくと、私は共産主義を支持していない)

 最後にインリンさんからのメッセージ。

だから、女の子がセクシーで目標のある自立した人生を生きる為に、

絶対に守らなければならないこと

それは平和と自由と平等ってことなんですよね☆