争点隠しの都議選

1 都議選投票率43.99%  7月3日、東京都議会議員選挙(定数127)が行われたが、過去2番目の低投票率だった。低投票率の原因として、特に争点がなかったことが挙げられる。しかし、正確にいえば争点はあったが、それがわかりにくくぼかされていたといえるのではないか。  例えば、事実上更迭された浜渦副知事の問題である。浜渦副知事が民主党都議にヤラセ質問をさせたことがきっかけとなり、浜渦氏が更迭に追い込まれた事件である。この事件で、石原知事が週に二、三回しか登庁しないことや、石原知事にかわり政策や人事を統括していた浜渦副知事の「恐怖独裁政治」(都議会自民党等)が発覚した。  この問題を争点とすると、石原知事の責任問題だと考えた場合、都議会での実質的な野党(注)は共産党しかない。自民党は浜渦問題を追及していても石原知事を支える立場であるし、民主党もどちらかというと石原知事を支える立場で、今回の事件ではヤラセ質問の当事者になってしまっている。  とすると、この問題を争点にしたいのは共産党だけで、自民党民主党はこの問題をあまり争点にしたくないだろう。  この問題以外でも、都議会では共産党以外がオール与党であるため、共産党以外の政党が争点をつくりにくい、あるいはつくりたくない状態にあったといえる。  東京新聞世論調査によると、石原知事の支持率は「支持する」が49.4%、「支持しない」が18.5%、「どちらとも言えない」が31.2%で、依然として支持率が高いので、浜渦問題で石原知事や知事を支える実質的な与党に与えたダメージは小さかったようだ。都議会で野党が共産党だけという状態が影響したのかもしれない。 2 民主党伸び悩み  投票率が低かったので、民主党が伸び悩み、自民党公明党が比較的堅調だった。民主党議席増は、直近の総選挙と参院選とも、都内で民主党自民党を得票率で上回っていることを考えると、想定の範囲を下回るので、勝利というのは言い過ぎだと思う。  共産党議席を減らしたが健闘した。ネットウヨクが流行し、ナショナリズムがもてはやされる風潮の中で、微減にとどまったのは、都議会で唯一の野党ということで投票した人が多かったのかもしれない。低投票率なので組織票に勝る共産党が健闘したというのは正しくない。東京新聞出口調査によると、無党派層共産党に投票した人は21.4%で、民主党についで2位になっている。  地域政党である東京生活者ネットワークは大量擁立作戦が失敗したといえる。朝日新聞の得票率調査によると、前回に比べて得票率を増やしているので、単に支持が減ったというわけでもない。二大政党志向で民主党に票が流れたといわれるが、民主党選挙協力をしていたので、単純に流れたというのも違うと思う。 3 国政でも、投票率上がれば民主党有利、下がれば自民党有利?  今回の都議選の結果を受けて、国政選挙を予想すると、都市部で無党派層の民主支持が多いことから、投票率が上がれば民主党有利、下がれば自民党有利といえる。  投票率が今回の都議選のように低ければ、地方では自民党の支持が高いので、国政選挙で自民党が勝利することはまず間違いないと思う。 4 民主党は都議会で野党になれるか?  次に、今回の都議選の結果を受けて、今後の都議会を考えると、都議会では、民主党が石原知事に反対の立場をとれるかが今後のポイントだと思う。野党にまわることは、石原知事が都民から高い支持を受けているので、都民の多くを敵に回すことになるが、今回の都議選で民主党が石原知事に批判的な立場で選挙戦を戦ったことから、野党にまわることが公約の実現といえるのではないか。与党的立場をとるなら自民党との違いがわかりにくく、民主党が都議会にいる存在意義に疑問符がつくし、次の選挙でもかえって不利に働くのではないか。 (注)  地方自治は、首長と議員はともに選挙で選ばれ、執行部と議会が対等な「二元代表制」であるため、地方議会には国政と違って与野党は本来ない。よって、筋論としては、自民党を含めた全政党が野党的立場にたつべきである。 <1>チェック機能 『隷属』脱し『対等』へ(東京新聞)
 都議選まで二カ月を切り、都内の街角には知事と自民党都議の握手する“ツーショットポスター”が目立ち始めた。百条委では知事側近と対立するが、「知事は守る」として「石原与党」を選挙向けの看板にうたう。  これに対し、佐々木信夫中央大教授(行政学)は「議会が対等・緊張関係にあるべき知事をポスターに使うのは古い時代の名残だ」と疑問を投げ掛ける。  東京都は巨大組織の執行機関、カナダ一国に匹敵する経済規模を持つ。「共産党を除くオール与党」といわれる都議会が、石原都政にチェック機能を発揮する対等な関係に“脱皮”できるのか。百条委は、もうひとつの側面も持っている。
参考WEB 都議選投票率は43.99% 過去2番目の低さ(朝日新聞) 浜渦副知事辞任へ 特別職刷新 都政の混乱収拾(産経新聞・ヤフー) 無党派 民主押し上げ(東京新聞) 小泉政権の4年間(03~05年)(朝日新聞) 主要政党の得票率推移(朝日新聞) 「分裂」民主、議席伸びて修復? カギ握る新顔20人(朝日新聞). 棄権することの意味(★J憲法&少年A★)