「グッバイ、レーニン!」
先日、近くの映画館で「グッバイ、レーニン!」が偶然上映されていたので、見に行った。ドイツ本国では話題になった映画だが、日本ではそれほど知られていない映画だと思う。
あらすじの紹介は他のサイトに委ねるとして、ここでは簡単に感想だけ。
母親に東ドイツが健在であると嘘をつき続ける滑稽な話であるが、観ていくうちに意外とシリアスな話であることに気づく。というのも、私は、深読みかもしれないが、次の二点を疑問に思った。
第一に、父親が西ドイツに亡命した本当の理由を考えると、母親の社会主義への信念は本心ではなかったのではないか。
第二に、息子の恋人ララが母親に本当のことを話して、母親はすべてを知っていたのではないか。
この二点を考えると、東ドイツが西ドイツに勝利したという最後のビデオは、社会主義のあるべき姿を語った感動的なシーンだが、母親は東ドイツが勝利したことよりも、息子がいかに母親を思っていたかに感動したのだろう。もちろん、社会主義のあるべき姿も、歪んだ社会主義体制下の東ドイツでは、多くの国民の願望であったに違いない。
秘密警察シュタージが暗躍し、統制経済で、非民主的だった東ドイツだが、社会主義国にも平等・雇用・福祉などで良い点があったのだろう。米国は、社会主義国家を悪の帝国と決めつけていたが、発想が単純すぎて危険だ。現在でも、社会主義国家がテロ支援国家に置き換わっただけで、この単純な発想は米国で続いている。
この映画は、ドイツでは東西ドイツ国民の心の中に残る亀裂を克服するのに役立ったようだ。日本では旧東ドイツ人の気持ちを理解するのに役立つのではないか。その点、私は映画を見終わってから、ユーモラスさよりもシリアスさの方が心に残った。
映画的にも良い映画だと思う。ララはかわいいし、ビデオやロケットなど感動的なシーンも多い。私はレーニン像が空輸されていくシーンが一番印象に残った。
参考
グッバイ、レーニン!(日本版公式ホームページ)
グッバイ、レーニン(欧州どまんなか)
[欧州映画紀行] No.032 グッバイ、レーニン!
ベルリンの壁崩壊15年(毎日新聞・記者の目)