「華氏911」でブッシュ政権の異常さを再確認

 マイケル・ムーアの「華氏911」を見たのが、偶然にも9月11日になった。小泉首相が映画を見る前から「偏った映画」と言ったり、ネットや読売新聞などでプロパガンダ映画という批判も多いが、見てみないことには批評できないので、私は久しぶりに映画館に足を運んでみた。  感想は、暗いニュースリンクさんやグレッグ・パラストの本を読んでいたので、新しく知ったことはあまりなかったが、いい映画ではないかと思った。イーアクセスがカーライルの投資を受けていることを新しく知ったぐらいだ。  アメリカ人に、大統領選でブッシュを落選させるために、民主党に投票させようとしている点はプロパガンダだが、ブッシュ氏に関する疑惑を取り上げている点はジャーナリズムの範囲ではないだろうか。アメリカではマスコミが大本営発表状態で、イラク戦争が正しく伝えられていないことを考えれば、この映画のプロパガンダは必要の範囲内だと思う。  私が日本人で、米大統領選の選挙権がないこともあるが、プロパガンダ映画という不快感はなかった。それどころか、途中、テロ警報の場面では面白すぎて、笑わせるのはやめろ、もう少しまじめにやれと思ったほどだ。  この映画で一番印象に残ったのは、失業中の貧しい若者がイラクに送られていくこと。アメリカでは軍需産業で国を支え、雇用を生み出している。日本は幸いにも、軍需産業ではなく建設産業なので仕事中に殺されることはないが、国土の自然がだいぶ破壊されてしまった。  映画で、ハローワークの職員が、失業中の若者に軍隊を勧めるシーンがあった。やらせなどではなく、これが現実なのだろう。不景気の日本でも、村上龍氏の『13歳のハローワーク』に自衛隊が出てくる。  どちらも、偽善はまったくない。しかし、私には抵抗を覚える。特に、イラク戦争のようなことに対しては、生活に困窮しても抵抗するべきではないか。日本の自衛隊も、イラク派兵している現状を考えると、今自衛隊に入隊することが何を意味するのか考える必要があるだろう。  国際政治はアナーキーであるし、ケリー氏が大統領になれば世界が安定するとも思えない。しかし、ブッシュ政権を終わらせることは全人類にとって望ましいということだけは断言できる。その点、この映画がチャップリンの「独裁者」と似ているという町山氏の指摘は正しいと思う。  ブッシュ政権の真実について、アメリカ人はこの映画を通して知る人が多いのかもしれないが、アメリカ以外ではそのことを再確認するだけの映画になるだろう。 参考 映画に何ができる?・・・何でもできる!(暗いニュースリンク) 華氏911と小泉首相(NOPOBLOG) 「華氏911」今、観て来た(町山智浩アメリカ日記) 「華氏911」は「チャップリンの独裁者」である(町山智浩アメリカ日記)